中小企業の現状

企業を継続・発展させるためには、内部環境(組織)と外部環境(市場)の変化に対応し続けなければなりません。


内部環境

企業には、従業員が共感できる、新たな価値観に基づいた労使関係や制度の構築が必要となってきました。

■長引くデフレ経済や公的社会保険料の負担増によって、賃金総額の適正管理が企業の命題となっています。

■非正規従業員が増大した結果、雇用の多様化と流動化が進み、単一的な人事制度では機能しなくなりました。

■少子高齢化は、労働力確保を難しくし、女性、高齢者、外国人など多様な人材活用が必要となってきました。

■雇用契約を権利と義務の行使と捉える人間不在の関係は、従業員のモチベーションを低下させています。

■成果主義などの人事制度が、働く従業員を疲弊させ、メンタルヘルス対策が企業の新たな課題となっています。

■日本的経営の特徴であった、終身雇用、年功序列、福利厚生、家族主義的労使関係が崩壊しつつあります。


外部環境

企業には、事業や商品を通じて、顧客が共感できる、企業の価値観やコンセプトが必要となってきました。

■中小企業では、顧客のニーズを掘り起こしていく「提案型・開拓型」へと改革しなければ、生き残れない時代となってきました。

■顧客対応のちょっとしたミスが、大きなクレームを生み、SNS等に拡散され、企業の信用や信頼を失墜させることもあります。

■市場が成熟した現代社会では、差別化を図れなければ、価格競争に巻き込まれ、企業の衰退を招くこととなります。

■商品の機能、性能、品質による差別化だけでは、顧客の満足は得られず、新たな価値の創造が必要となってきました。

■顧客は、楽しい、面白いといった、精神的な満足感を、商品に求めるようになってきました。

■顧客は、自分らしさや自己表現ができる価値を、企業が提供する価値観に求めるようになりました。


企業には、顧客と従業員が共感できる、価値観が必要

人は、さまざまな経験を通じて、楽しい、面白い、不安、怒りといった感情を持ち、自分にとって、大切なもの、譲れないものを、かたち作っていきます。

自分にとって、大切なもの、譲れないもの、思いやこだわり、それが価値です。その価値を値打ちがある、価値があると判断する見方、考え方が価値観です。

価値観には、自分にとって価値と判断する価値判断と、価値と判断する際、基準となる価値基準があります。人生観、結婚観、仕事観は、人によって、その価値観は異なっています。


企業の価値観とは

企業にとって、価値観とは、経営理念、経営目標、行動規範に示された、企業が目指す先、あるべき姿、求められる人材像をいいます。

企業は、事業を運営する上で、価値観を持っていなければ、存在価値・存在意義を失ってしまいます。

明確な価値観は、事業の方向性、日常業務上の判断基準、従業員の採用や育成の評価基準となります。

明確な価値観がなければ、従業員それぞれの価値観によって、日常業務が行われ、経営者の思いとは異なる方向へと、事業が運営されることとなります。

経営理念(ミッション)とは、

企業が、何をもって社会に貢献するのか、社会で存在する価値・意義・使命・目的を示すものです。

経営目標(ビジョン)とは、

企業が、経営理念を実現する際、目指すべきゴールを示すものです。

行動規範(バリュー)とは、

経営哲学とも言われますが、企業が、従業員に求める価値観・倫理観、行動指針、行動基準を示したものです。


従業員にとって、企業価値観とは

経営者と従業員が、経営理念、経営目標、行動規範を共通の価値観として、その実現のために協力し合うことが、新たな労使関係の構築につながります。

企業の価値観が明確であれば、企業が目指す目的、目標に向かって、従業員は自らの考え、自律的な行動が起こせます。

経営者の価値観、事業観が、従業員に明確に伝わってこそ、企業への忠誠心や帰属意識が芽生えます。

企業には、従業員の気持ちを一つにまとめる価値観が必要であり、その価値観を、従業員に繰り返し語り掛け、浸透させることが重要です。

企業の価値観に共感し、共有できるからこそ、従業員は、企業の価値観を具現化した商品を創造することができます。


顧客にとって、企業価値観とは

企業の価値観には、企業が社会に貢献するための、思いやこだわりが込められています。企業の思いやこだわりが、企業の強みであり、他社との違いであるはずです。

世界最大の家具販売店イケアは、くつろぎの空間、心地よい暮らし、そのライフスタイルを事業コンセプトとしています。

イケアは、家具や雑貨を売っているのではなく、家具を使ったときの心地よさや生活そのものを商品としているのです。

消費者がイケアで家具を購入するのは、イケアの企業としての価値観に共感し、その商品から感情的、精神的な満足を得られるからです。

顧客が、企業の価値観に共感し、価値観を共有できれば、顧客と企業、顧客と商品との間に、強い連帯感、忠誠心(ロイヤルティ)が生まれます。

顧客のリピート化、顧客の熱狂的なファン化を図るには、顧客と共有できる価値観が必要です。

商品のコンセプト、事業のコンセプトに、企業の思いやこだわり、企業の価値観を込めることが、顧客を魅了し続ける価値となります。

コンセプトには、顧客に他社との差異を認識させ、信頼を与え、魅了するメッセージ性、ストーリー性が必要です。

このコンセプトが、企業や商品を認知させ、連想させることがブランド化に繋がっていきます。

企業や商品のブランドを高めることが、他社との差別化となり、オンリーワンの商品、オンリーワンの企業を作り出します。

このブランド化は、多種多様な商品を持つ大手企業よりも、顧客を特定し、商品を特化させている中小企業には有利といえます。


企業価値観の実例

テレビ、雑誌等で紹介されていますが、長野県長野市にある中央タクシーは、タクシー業界において県内一の売上を誇り、県内同業他社の2.5倍の売上実績を上げています。

通常のタクシー事業以外に、空港やリゾート地への乗合タクシー、高齢者や障害者のための介護タクシー、長野県の観光地を巡る観光タクシーなどの事業を展開しています。

電話予約中心の営業方法、業界初、革新的な新事業は、顧客と身近に接する従業員の発案によって、企画、事業化されています。

乗務員の方は、全員が未経験者であり、資格やスキルよりも「お客様に愛される人柄」が重要とされます。

未経験者のために、人材育成、働きやすい環境や制度が充実しており、あいさつを大切にし、助け合い、感謝しあい、励ましあう風土があります。


以下は、中央タクシーHPから引用しました。


経営理念

お客様が先 利益は後

お客様とは

  • お客様は、自分以外の全ての方である。
  • お客様は、我々の生活を支えてくださる方である。
  • お客様は、我々の足りない部分を教えてくださる人生の師である。

利益とは

  • 利益の本質は革新料である。
  • 利益は我が社の真心と力の限りを尽くして、お客様にお使いした結果ちょうだいする心からの満足料である。
  • 利益は周到な計画と強固な意思によって拡大する。
  • 利益は我が社に集う全ての人々、そして我が社を取り巻く全ての人々にとって福祉の源泉である。
  • 利益は我が社が将来に向かって益々拡大発展し、しかもその道程で遭遇するリスクを克服するための原資である。


憲章

我々は、長野・新潟・群馬・埼玉・山梨県民の生活にとって必要不可欠であり、さらに交通弱者・高齢者にとってなくてはならない存在となる。

私達が接することによって「生きる」勇気が湧き、「幸せ」を感じ、「親切」の素晴らしさを知ってくださる多くの方々がいらっしゃる。

私達はお客様にとって、いつまでもこのうえなく、なくてはならない人としてあり続け、この人がいてくれて本当に助かりますと、思わず涙とともに喜んでいただける。

我が社はそんな人々によってのみ構成されている会社です。


目的と使命

お客様主義を礎として「お客様・社会・会社」三位一体の相互信頼を築き、これをもって地域社会に貢献し、誇り・躍動・豊かさを追求するプロ集団として業界の革命児となる


考動指針

我らが誓い

・お客様の尊厳を守り、自らの地位向上に努めます

・自己内天の規律に徹し、一切の怠慢をなくします

・プロドライバーの自負にかけ、無事故無違反を完全達成します


基本動作

自己紹介  ドアサービス  傘サービス

自己紹介とは

  • 乗車したときに、お客様に安心を感じていただくために行います。
  • 「わたくし、中央タクシーの〇〇と申します。よろしくお願い致します。」と伝える。
  • いつでも誰にでも行います。
  • 感謝の気持ちを込めて行います。

ドアサービスとは

  • 自動ドアを使わずに、手でドアを開閉します。
  • 感謝の気持ちを込めて行います。
  • お客様を大切にするという表現です。
  • 安全のために行います。

傘サービスとは

  • お客様が雨に濡れないように行います。
  • トランクにはお客様と付きそう自分の2本の傘を常備します。


企業の価値観の根底には、顧客や従業員など、人を大切にする精神が必要ではないでしょうか。その精神が、顧客や従業員と共有できたとき、従業員が誇れる企業、地域社会で愛される企業になるのではないでしょうか。

以上