働きやすい職場環境を作るためには

企業や組織では、経営理念、経営目標を実現するために、事業戦略と事業計画を策定します。すべての従業員が、事業計画に従って、問題・課題を解決するべく行動すれば、本来、事業目的や成果が達成できるはずです。

しかしながら、従業員一人ひとりが、高い能力、多くの経験を有していても、職場・現場での協力がなければ、事業目的や成果を上げることはできません。

職場・現場同士が対立する組織、従業員同士が反目し合う職場・現場では、事業目的や成果を上げることはできません。

米国の経営コンサルタントであるパトリック レンシオーニ氏が、その著書の中で、危ない組織の5症状を指摘しました。

1.信頼の欠如   : 自分の弱みを隠し、仲間と信じあえない

2.衝突への恐怖  : 不満があっても、腹を割って議論をしない

3.責任感の不足  : 同意し決定したことでも、責任をもたない

4.説明責任の回避 : 衝突を避けて、仲間の責任を問えない

5.結果への無関心 : 組織の目標より、個人成績を優先させる


特に、組織内で、お互いが自分をさらけ出し、言いたいことが言える信頼の関係がなければ、組織は機能しないと述べています。

自律的な組織を作るためには、企業と従業員、従業員同士に、信頼関係がなければ成立しません。

お互いが信頼し合える組織を作るために、企業が取り組むべきことは、次のような職場環境の整備をすることです。

1 企業は、従業員が自由な議論ができる風通しの良い環境を作ること

2 企業は、従業員が価値観、目標などを共有できる環境を作ること

3 企業は、従業員のスキルやキャリアに応じて権限を委譲すること

4 企業は、リーダーの役割、権限と責任を仕事として明確にすること


風通しの良い職場環境

中小企業における組織風土は、経営者が、従業員とともに、長い年月をかけて築き上げてきたものです。

中小企業の良さは、家族的な雰囲気、気心知れた仲間、強い絆で結ばれた共同体です。ここに、大手企業と同じような成果主義、数字だけで判断する管理経営は向きません。

職場・現場で、上司が、その役割を権力や権威の行使であると、はき違えるならば、組織は崩壊します。上司の役割は、組織の目標を達成することにあります。

部下のキャリアやスキルに応じて、指示や指導をし、援助・支援しながら、目標を達成するために、上司には権限が与えられているのです。

上司の立場にある従業員は、部下を認め、信頼しなければ、良好な組織風土は育ちません。

人の幸せとは、①人に愛されること、②人にほめられること、③人の役に立つこと、④人から必要とされること と言われています。

上司、部下、同僚の関係にある従業員が、お互いを褒め合い、役に立とうと助け合い、お互いを必要とするような環境であれば、労務トラブルのない、働き甲斐がある職場環境が実現できます。

自律的組織を構築するためには、従業員同士が助け合う、強い絆と信頼関係がなければなりません。

仕事で成果を上げるためには、権限や権力で命令によってやらせるのではなく、従業員同士が、お互いの問題に関心を持ち、気が付いたことは、自由に話し合う環境を作ることが大切です。

風通しが良い環境とは、従業員同士の信頼関係のもと、お互いが共通の認識をもち、問題・課題の解決に向き合い、自由な議論ができる職場環境をいいます。


共感と共有

お互いが信頼関係を築くには、相手を認めること、お互いが共感できることではないでしょうか。相手が体験した喜びや悲しみなどの感情と、同じ共通の感情をもつことが、共感を生みます。

企業と従業員、従業員同士の信頼関係を築くためには、共感できる価値観を持つことが重要です。企業の価値観に、みんなが共感できれば、強い絆と自律性が生まれます。

企業の価値観は、事業のコンセプトや方向性、日常業務における判断基準、従業員の評価基準となります。

従業員がもつ勘やコツ、ノウハウが共有されなければ、各人が自分のやり方で仕事をするようになります。お互いの知識や技術を教え合い、知恵や工夫を出し合って、切磋琢磨することが、スキルの向上に繋がります。

上司、部下、同僚の関係にある従業員は、自らの問題・課題であるという、当事者意識を持ち、お互いが思いやりを持って、助け合う気持ちを持たなければなりません。

すべての従業員が、同じ目的、同じ目標を共有しなければ、当事者意識も助け合う気持ちも生まれません。

すべての従業員が、価値観を共有し、それぞれの役割と責任を果し、助け合うことで、目的・目標を達成することでき、キャリアを重ねることができます。

問題を一人で解決しようと隠すから、大きなトラブルとなります。職場・現場で、みんなの問題として共有し、知恵を出し合えば、解決ができ、組織を強くすることができます。

従業員自身が、プロ意識、当事者意識、連帯意識をもつためには、従業員全員が、価値観、目的・目標、知恵、情報、責任、成果を共有することが必要なのです。


1.価値観の共有


従業員全員が、企業の価値観に共感し、同じ使命感や価値観を共有すること


2.目的・目標の共有


従業員全員が、与えられた役割・使命を共有し、助け合うことで、目的・目標を達成すること


3.知恵の共有


従業員全員が、問題・課題の解決に、知恵を出し合い、改善を重ね、知恵と工夫を共有すること

4.情報の共有


従業員全員が、あるべき姿と現状の差異を、同じ情報として共有し、公平であること


5.責任の共有


トラブルは個人ではなく、仕組みの問題と捉え、従業員全員で、責任を共有すること


6.成果の共有


従業員全員が、与えられた役割・使命を果すことで得られる成果や成功体験を共有すること


権限移譲

顧客が求める願望や不満から問題・課題に見つけ出し、その問題・課題を解決することで、得られる便益や効用が顧客の価値となります。顧客の願望や不満を、顧客の価値に変えることが、価値の創造です。

その価値は、顧客を満足させるだけでなく、顧客を魅了し続ける価値でなければなりません。

顧客が、何を必要とし、何を実現したいのか、潜在化した顧客の願望や不満を、問題・課題として顕在化させるには、従業員が、自律性、主体性をもって考え、問題・課題に気付くことが大切です。

従業員が、自律性、主体性、独自性、創造性をもって、仕事をするには、従業員自身が、プロ意識、当事者意識、連帯意識を持っていなければなりません。

従業員自身が、自律性、主体性、独自性、創造性をもって、仕事をすることができれば、達成感や満足感を感じることに繋がり、自らの存在価値や自己成長を実感することができます。

自律性、主体性、独自性、創造性を育むためには、仕事の裁量性を高めることです。従業員のスキルやキャリアに応じて、権限を委譲することです。

特に、顧客と接する職場・現場では、顧客毎に個別の対応が求められます。顧客の反応や意見によって、従業員が自らの判断で、提案や改善ができる柔軟な現場対応には、権限の委譲が必須となります。

従業員のスキルやキャリアに応じて、権限を委譲する際には、価値観、目的・目標、情報などの共有がなされていなければなりません。

その上で、スキルやキャリアに応じた権限移譲の方針、範囲を明確にし、権限行使が、みんなでチェックできる体制を作っておく必要があります。


連合艦隊司令長官 山本五十六が遺した言葉に次のような名言があります。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ

話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず

やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず


組織で、人材を育て、人材を活かし、人材を強化するのに、もっとも大切なことは、従業員を認めて、任せて、信じることです。


リーダーシップ

中小企業では、上司の立場である従業員が、自ら業務を担当しながら、部下の面倒を見なければならないプレイングマネージャーが多いのではないでしょうか。

本来、上司は、若手を指導し、支援することで、チームとして業務を遂行することが役目でありながら、成果を出すことが優先されるために、上司自らが担当者と同じ業務をこなしているのが実情です。

そのため、人材育成が進まず、結果として、若手の離職率が高くなってきます。

リーダーの役割は、規模の大小はあっても、任された組織(部、課、職場、現場、チーム)の目的や目標を達成するために、その組織を活性化させ、その業績に責任を持つことにあります。

組織をマネジメントするリーダーは、組織業績と組織活性化に責任を負わなければなりません。

指示・命令によって、部下を管理・統制する統率型リーダーのもとでは、受け身で、指示待ち型の従業員が育ってしまいます。

自律的組織の場合、組織の長である上司は、任せて、考えさせ、手助けする支援型リーダーが望ましいかもしれません。

自律的な組織は、少人数で、自由に対等な立場で、意見交換ができるフラットな組織が向いています。


以上