モチベーションを高めること

人は、あれがほしい、こうなりたいといった願望や期待、うまくいかない、面白くないといった不満や不安、これら2つの感情を有しています。願望や期待はポジティブな感情であり、不満や不安はネガティブな感情です。

モチベーションとは、人を行動に駆り立てる感情の力であり、やる気、やりがい、意欲、動機付けと定義されます。従業員であれ、消費者であれ、人の行動には、このモチベーションが、影響を与えています。

モチベーション理論は、1911年、米国のテイラーが提唱した「科学的管理法」が始まりとされています。米国の心理学者のマズローが提唱した欲求5段階説や米国の臨床心理学者のハーズバーグが提唱した動機付け衛生理論も、モチベーション理論の一つです。

近年では、目標設定理論 (目標管理制度)やコンピテンシー理論(コンピテンシーモデル・行動特性)が注目され、人事制度に応用する企業が増えてきています。


モチベーションには2つの動機付けがある

モチベーションを高めるためには、自分自身の心の中から湧いてくる感情や欲求によって、行動を喚起させる「内発的動機付け」と、権力や報酬など外部からの働きかけによって、行動を促し、誘発させる「外発的動機付け」があります。

内発的動機付けは、自己の感情や欲求によって、行動を喚起させますが、外発的動機付けは、経済的報酬や心理的報酬など、外からの働きかけによって、行動を喚起させる点で異なります。

従業員が、自らの意思で考え、問題解決を図るべく、行動を起こすのが、内発的動機付けです。一方で、目標を達成すれば経済的報酬を与える目標管理制度、感謝と賞賛によって心理的報酬を与える表彰制度など、外部からの働きかけによって行動を促すのが、外発的動機付けです。

内発的動機付けは、達成そのものを目的として、行動を起こすのに対し、外発的動機付けは、達成後に得られる報酬(結果に対して報いる)を目的として、行動を起こします。

内発的動機付けと外発的動機付けは、相互に影響し合って、人の行動を左右します。強い内発的動機付けがあれば、外発的動機付けがなくても、行動を引き起こします。外発的動機付けだけでは、持続的な行動には繋がらないため、内発的動機付けを高めることがなにより重要となっています。


外発的動機付けでモチベーションを高めるには

従業員の行動を喚起するには、2つの動機付けが考えられます。一つには、従業員の内面の感情や欲求を刺激する内発的動機付けであり、もう一つは、権力や報酬などによって、外部から刺激する外発的動機付けです。

外発的動機付けには、次のような外部からの働きかけによって、動機付ける方法があります。

従業員を権力、報酬などによって外発的に刺激し、動機付ける方法

1.権力により、従業員に仕事を強制し、成果に対して、賞罰など心理的報酬を与える

2.従業員に目標を定めさせ、成果に対して、給与・賞与など経済的報酬を与える

3.従業員に目標を定めさせ、成果に対して、昇進・昇格など心理的報酬を与える


大手企業で導入される目標管理制度は、金銭など経済的報酬によって、従業員の行動を促す、代表的な外発的動機付けです。また、提案活動で、成果があった際に、商品や感謝状で、評価する表彰制度は、非金銭な心理的報酬によって、従業員の行動を促す外発的動機付けにあたります。

成果に対して得られる経済的報酬や心理的報酬が、義務を果たした見返りとして、従業員に当然の権利とみなされた場合は、外発的動機付けとしての効果はありません。

企業による外発的動機付けが、従業員にやらされ感を与えてしまえば、従業員のやる気、やりがいを阻害することになってしまいます。


内発的動機付けでモチベーションを高めるには

企業が最初に取り組むべきことは、従業員がやりがいを感じられるように、内発的動機付けによって、モチベーションを高めることです。

人には、このままではいけない、変わりたい、変えたいといった変化を願う、自分自身の心の中から湧いてくる感情や欲求があります。これらの感情や欲求が、人を行動へと突き動かす、内発的動機付けとなります。

 自分を変えたい (スキル)

 仕事、会社、社会を変えたい (キャリア)

 他者を変えたい (マインド)


 



内発的動機付けには、次のような従業員の内面の感情や欲求に働きかけ、動機付ける方法があります。


1.内発的動機付け スキルを高める

自分を変えたい

人は、このままではいけない、変わりたい、自分を変えたいと願う気持ちを持っています。

人には、自分の存在価値、自分の強み、なりたい自分を知り、自分を高め、自己実現したい、自己成長したいという感情や欲求があるのです。

自己実現・自己成長を実感したとき、自己効力感・有能感を感じることができます。

自己効力感や有能感とは、自分には、この状況に対処するために、実行するスキルがある、自分にはできると信じる、自信のことです。

スキルとは、単に資格を取得することや業務ツールが使える知識や技術を意味するのではありません。

スキルを広義に解釈すると、知識、技能、態度のことを意味しますが、ハーバード大学 ローバート カッツ教授は、ビジネスにおけるスキルを、次のように定義しました。

■テクニカルスキル(専門能力) :  業務遂行に必要な専門的な能力

■ヒューマンスキル(対人関係能力)  : 良好な人間関係を築く能力

■コンセプチュアルスキル(概念化能力)  : 論理的思考力、着想力、問題解決力


ヒュウーマンスキル(対人関係能力)やコンセプチュアルスキル(概念化能力)は、仕事を通じて、ある一定のレベルに達した従業員でなければ、習得できないスキルです。

仕事において、自己のスキルが高まるにつれ、自分の強みを知り、自己のスキルを活かすことで、職業倫理やプロ意識が芽生えてきます。自己ビジョンを実現し、成長した実感を得ることが、ポジティブな感情を生み、モチベーションを高めます。

企業は、従業員に自ら行動を起こさせるために、従業員にプロ意識を持たせて、スキルを高め、スキルを活かすことが必要です。


2.内発的動機付け キャリアを高める

仕事、会社、社会を変えたい

人は、自分を変えたい願望と同時に、仕事や会社、社会など周りの環境も変えてみたいと願う気持ちを持っています。

人には、高みを目指して、目標を定め、望む結果を達成したい、結果に満足したいという感情や欲求があるのです。

目標を定め、望む結果が得られたとき、達成感、充実感を感じることができます。

キャリアを資格、学歴、過去の地位と捉えがちですが、本来、キャリアとは、業務上の問題・課題を解決し、改善を重ねて、成果を上げた職務の経歴であり、その過程での協働実績(職場・現場への貢献、同僚への支援、部下の育成)をいいます。

スキルは、キャリアを積み、蓄積された結果であるのに対し、キャリアは、業務を通じて、スキルを蓄積していく過程(プロセス)を意味します。

仕事において、発生する問題・課題を、自分のスキルやキャリアがあれば、解決できると自信を持ち、仲間の助けも受けながら、小さな達成感、満足感を重ねることが、ポジティブな感情を生み、モチベーションを高めます。

企業は、従業員に自ら行動を起こさせるために、従業員に当事者意識を持たせて、成長の機会を与え、キャリアを積ませることが必要です。


3.内発的動機付け マインドを高める

他者を変えたい

人は、周りの人を変えたい、影響を与える存在でありたいと願う気持ちがあります。

人には、他者と絆を築き、他者を思いやり、他者から認められたいという感情や欲求があるのです。ここでの他者とは、仲間、企業、地域社会をいいます。

他者からの称賛や尊敬を得られたとき、自尊心が高まり、幸福感を感じることができます。

人は、それぞれに、個性、性格、人格、価値観、倫理観をもっていますが、これらを否定されたとき、相手に攻撃的な態度を取ったり、落ち込んだりと、ネガティブな感情が生まれます。労務問題のほとんどが、このネガティブな感情によって、引き起こされているといえます。

相手を思いやり、認め合い、信頼し合う、精神(マインド)がなければなりません。

仕事において、上司、部下、同僚など仲間だけでなく、顧客や地域社会からの信頼を得て、褒められ、役に立ち、必要とさせたときに、ポジティブな感情を生まれ、モチベーションが高まります。

企業は、従業員に自ら行動を起こさせるために、従業員が信頼関係を築けるように、連帯意識を持たせ、そのマインドを評価することが必要です。


内発的動機付けとは目的を意識づけること


人には、自分や周りの環境、他者を変えたいと願うポジティブな感情とは別に、変わりたくない、変えたくないというネガティブな感情も併せ持っています。

従業員に、ポジティブな感情を持ち続けさせるためには、プロ意識、当事者意識、連帯意識など、その目的を意識付けることが大切です。

従業員が、その目的意識を持つことは、従業員の変わりたいとの変化への感情や欲求を刺激することになります。

企業が、従業員のスキル、キャリア、マインドを育て、活かすことが、従業員に自らの意思で考え、行動させる力となります。

スキル キャリア マインド
プロ意識を意識づけることが、 当事者意識を意識づけることが、 連帯意識を意識づけることが、
自分を変えたいという感情を起こさせ、 会社・社会を変えたいという感情を起こさせ、 人の評価を変えたいという感情を起こさせ、
能力を高めることによって、 経験を重ねることによって、 他者を思いやる精神によって、
自己効力感、成長実感を味わうことができ、 達成感、充実感を味わうことができ、 幸福感、満足感を味わうことができ、
更なるプロ意識が芽生える 更なる当事者意識が芽生える 更なる連帯意識が芽生える


以上